待ち続けること
コトリエ木曜小学生のリポートです。
こちらは、昨年までの幼児クラスからの持ち上がり一年生のメンバーが中心のクラスです。
以前のリポートでも書いたのですが、このメンバーは年中頃はイキイキと作っていましたが、
年長になると、何かにつけてスタッフに対し「子どもっぽい!」「しょぼい!」そうした攻撃的な言葉を言うようになり、
何かを作るというよりも色水遊びや紙を細かくやぶる、切るなどして過ごすことが多くなっていきました。
「コトリエは行きたいと思ったら行けばいい場所で、行かなきゃいけない場所ではないよ。」
そんなことを親子で確認してもらいながら、
そして否定的な言動にも色んな思いがあってのことで、その葛藤に折り合いつけているんだろうと、
かといってそれを周りがすぐにどうこう対処するのではなく、
本人たちが時間をかけて、自身で乗り切ることに寄り添っていこうと、
お母さんたちと思いを共有しながら、待ち続けて一年間を過ごしました。
そうして、一年生となった三人の昨日の様子です。
来るなり2人は、お家から自分でもってきた絵本を読みはじめました。
もう1人は、「ピアノを作りたい。」と、もう来る前から今日何を作るか決めてきたという感じで、早速作りはじめました。
絵本を読みはじめて20分くらいした頃に、1人がふと
「ねえ、今日も粘土ある?」
とスタッフに声をかけ、鳥が大好きなガックンは粘土で鳥を作りはじめました。
途中、鳥の目が大きくなってしまうと、もう一度粘土を上から足して、描き直しました。
この、描き直すという何気ないことが、実は本当にすごいことなのだと思います。
なぜなら「やり直す」というのは、失敗へのがっかり以上に「作りたい」という思いがあり、
自分ならできると言う自信がなければやり直せないからです。
そして去年は、ほんの少しでも失敗したら「ぼく、もう、やめる。」という、ガックンの姿もたくさん見てきたからです。
でも、今日は自分で直す。
そして自分の納得のいく目が描けた。
そんな姿に、ひそかに感動しながら様子を見ていると、
完成した鳥と枝を、透明パックに入れ、パックの蓋をセロテープでしっかり止めながら、ガックンがつぶやきました。
「風にのって逃げないように。」
自分の作った鳥が、逃げちゃうからふたをしとこう。
というんですね。
作り物だと言うことをもちろんわかっています。
その上で、自分が作り出す世界に自分を作り出す想像の世界に浸り、出てきた一言です。
もう、完璧。
出来栄えだけを見るなら、ガックンの鳥は平面に近いです。
同じ学年で立体でもっと上手く鳥の形を作れる子はたくさんいます。
でも、大事なのはそんなことじゃない。
技術なんて好きでやっていれば、後からついてきます。
それよりも、自分の作った鳥を、どれほど自分で気に入ってるかということ、そして
「逃げないように」
なんて。ほんと、完璧です。
さて、場面は少し戻って、ガックンが鳥づくりに向かったあとも、しばらく絵本を読んでいたけーちゃんは、
「そうだ大きい砂時計を作りたいんだ。」
前回の計画を思い出したところからスタート。
ペットボトルや発泡玉や、果物のネットなど、コトリエにある材料を使って砂時計を作りました。
とっても大満足の砂時計ができたのでしょう。
床において自分の身長のどこまで来ているか、
頭を並べで足のどこまで来ているか、比べたりもしていました。
片付けをする時も大事そうにわきにかかえて放しませんでした。
そうして、帰りがけ、外にでると、それを空に掲げ、透かして眺めて、ニヤリ。
自分の作品をどれほどいとおしく思っているか
言い換えれば自分をどれほどいとおしく思っているか。
それが伝わってくるような場面でした。
そして、もう1人、最初からひたすらピアノを作っていたいっくん 。
板のダンボールを切り出して形を作り、一つ一つ鍵盤を切って描いて作り、大きなピアノを作っていきました。
このピアノはダンボールですから、本当に演奏ができるわけではありません。
けれども、作っている間、きっといっくんの頭の中には素敵なピアノの演奏が流れていたのでしょう。
そして、頭の中にピアノのBGMを流しながら、頭の中に設計図引き、ピアノを作っていきました。
「できたー!!」
完成の嬉しさから思わず叫んだ、いっくんでした。
そうして出来上がったピアノに、お迎えについて来た弟を迷うことなく膝の上に座らせるお兄ちゃんの背中は、
なんとも優しいお兄ちゃんの背中でした。
そんな三人の隣で、体験で来てくれたメンバーも、
「コトリエはじめてですか?」と言うような使いこなしぶりで、お絵かきと工作をたっぷりと満喫してくれていました。
こんな風に、自分の好きを、そして自分を好きであることを、
大切に、ゆっくりゆっくり育っていってくれたらと思います。