実践・考察

「こどもたちが、自ら見つけ、考え、遊ぶ、余白のある環境」 をテーマに、
こどもたちを取り巻くヒト・モノ・コトの環境について研究、考察します。

出会いが育てる遊び

今回は、越谷市内のある親子講座でのことです。

 

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今回のテーマは「親子でつくって遊ぶ」

ということで、ゆっくり、たっぷり一時間半、子ども達の心行くまま、

絵を描いたり作ったりしてもらいました。

その中からポイントを紹介します。

 

 

今、一人では気づかない・育たない遊びもある

 

生まれてきて若い、何事にたいしても単純に知識や経験の少ない、
子ども達の遊ぶ姿をみていると気づくことがあります。

 

それは、モデルとの出会いの大切さです。

 

感じるのは、例えば今回のワークショップのこんな場面。
最初は大きな紙とクレヨンで、みんなで自由に絵を描きました。

 

手を動かすと、それが線にあらわれるという感覚が面白い人。
頭に思ったことが形になって、絵を描けるのが面白い人。
面白さは色々あるでしょう。

 

そうしてしばらくすると、子ども達の反応はわかれていきました。

 

面白さが継続中の人は描き続けるし、
面白さに満足した人はやめます。「飽きる」という状態です。

 

描き続けている子はそのままたっぷりお絵かきの時間を満喫してもらえればと思うので、
今回お伝えしたいのは、描くのをやめた子ども達とのこと。

 

もう描いて遊ぶのやめた!

 

そんなわが子を前にすると、ママによっては
「あ、もう、うちの子はこの遊びに飽きたのかな。他の遊びがしたいのかな。

講師は次の遊びにいこうとしないし、どうしよう。」

 

なんて思ってソワソワしたりする人もいるのですが、
そう考える前に、このことを思いだしてもらえたらと思います。

 

経験が少ない子ども達の遊びには、
一人で考えつく範囲の遊びと、誰かと遊ぶことで(見ることで)気づき、発展する遊びがあるということ。

 

****

 

車の絵を描いた男の子がいました。
それを見て楽しみ、またもう一枚描くというような面白さもあるでしょう。
だけど、その子は絵を車の絵を描くということだけには飽きていたようでした。

 

そこで、僕は自分の描いた車に棒をつけて、彼のところに行きました。
すると、彼はパッとひらめきます。

 

「僕も棒つける!できたら一緒に走ろうよ!」
こうしてごっこ遊びがはじまりました。

 

しばらくして、彼はまた言いました。
「信号も作ろう!」
今度は信号をつくり、信号にあわせて進んだり・止ったりして遊びました。
結局彼は終了までの時間めいっぱい、想像力を架け橋にして、
描いて作る遊びとそれらを使ったごっこ遊びをいったりきたり楽しんでいました。

 

こうした遊びの発展は、きっと彼が以前に自分の経験のどこかで、

ペープサート(やそれに似たもの)を見たことがあったり、

人形とかで遊んだこと(そういう遊びや劇を見たことなど)がなければ、

そのアイデアを自分でゼロから生み出すというのは難しいもののように思います。
出会うから気づくし、それをもとにした新しいアイデアが生まれるのでしょう。

 

 

出会いが気づかせてくれること、環境との出会い

 

出会いが気づかせてくれるというのは、好きな食べ物に例に考えてもわかりやすいと思います。
みなさん、好きな食べ物を思い浮かべてみてください。
自分がそれを好きだということをいつ知りましたか?

 

その食べ物を食べた時ですよね。
僕はカレーが好きですが、そもそもカレーという食べ物に出会わなければ、

「カレーが好き」という「自分」には気づきません。

 

モデルに出会うから、気づく。
遊びもそうなのだと思います。

 

では今の時代、子ども達の環境にはどのような遊びのモデルがあるかというと。
スマホで子どもの好きなアニメの動画が見られるし、
百円ショップでもある程度ちゃんとしたディテールの車や電車のおもちゃが買えます。
どれも簡単で、便利です。

 

しかし反対に、身近なモノやシンプルな形を何かに見立てたり、ものを工夫して発展させるという、

主体的&想像的な方法のモデルに出会う場面はとても少ない。

 

だから子どもが
「飽きた。」

 

というときでも、
それが本当につまらないから飽きているのか、
もしかしたらもっと発展するかもしれないけど、
そのきっかけをまだ知らず、モデルにも出会ってないから、
遊びの展開で生まれず
「飽きた」ということなのか、
少なくとも理由はこの二つ以上はあるように思います。

 

そこで、ママ・パパ達、先生、周りの友達が鍵になってくるのでしょう。
一緒に遊ぶ中で、親自身の経験から生まれる視点や言葉は、遊びを展開させるヒントになるかもしれないし。
あるいはわざわざ直接こちらが働きかけなくても、周りの友達の遊び方をみて、気づくこともあるかもしれません。
学ぶの語源はまねるから来たとも言いますが、そうやって、遊びを学んでいく。
それで発展したら、遊びはいっそう盛り上がるし。
それでも「つまらない」と思うなら、それは本当に遊びきった、好みではなかった、

あるいはまだタイミングではなかったということなのでしょう。

 

飽きた。

 

そんな時は、もう一度立ち止まって、わが子の様子を見てみてください。
そしてママ・パパなりに、一緒に遊びながら何か提案してみてください。
ちょっとのきっかけさえあれば、今度は子ども達のほうが、遊びをどんどん発展させていくかもしれません。

 

*****

 

子ども達は自分自身で育つ力というのをたくさんもっています。

 

しかし、人に出会い、物に出会い、環境に出会わなければ、はじまらない育ちというのもたくさんある。
そのことに意識をもちながら、あらためて子ども達の育つ環境に目を向け、保育や教育について考えていきたいと思います。

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