実践・考察

「こどもたちが、自ら見つけ、考え、遊ぶ、余白のある環境」 をテーマに、
こどもたちを取り巻くヒト・モノ・コトの環境について研究、考察します。

こども主体ムードで大人の役目と責任まで放棄しない

子育てや教育、保育の現場で、こどもの思いや興味を軸にした「子ども主体」というムードが広がっているのはとても良いことだと思う。

しかし、時々、ここは大人がちゃんと言わないと、大人としての役目と責任の放棄では?
と感じる場面もある。

例えば、大人から見て、やってはいけないと思うことをちゃんと「それはやってはいけないよ」と大人が言うことは、子どもの思いを大切にすることと同じか、時にはそれ以上に大切だと思う。
それを伝えた上で、それでも子どもが、それをやるならば、そのときはその思いも受け止める。
そして、その気持ちもよくわかったけど、やっぱりやってはいけないことだよと伝えることが大事だと思う。
大人が子どもに注意をすることは、頭ごなしに叱ったり、恐怖心で強制的に行動をコントロールすることではない。
(同様に、うまく子どもの気持ちを乗せることで行動をコントロールすることでもない。)

そこが混同されると、
注意=子どもに寄り添えてない、子ども主体ではないというマイナスな印象にすり替わる。

そうではない。

そうではないのだけど、

現場で色々な大人に出会わせてもらうと、
・こども主体という考えを優先しすぎて「子どもに寄り添いたいけど、どこまで寄り添えばいいかわからない」と自分の考えを見失っている人や
・こども主体を履き違え、なんでもかんでも「こどもがやることは素晴らしい」「常識や慣習からはみ出すことは素晴らしい」と自分の価値判断をすることをやめてしまっているような人

も少なくない。
だから、あらためて整理することが大事だと思う。

整理とは、子どもに注意をしようと思った時
「ほんとうにそれはやってはいけないか?」「注意することは、その子の思いよりも大切にしてほしい価値観か?」と大人がちゃんと自分の頭で考えることだ。(その場で考えられなければ、あとであらためて考えるのでもいい。)

自分の場合なら
その行動が他の誰かを傷つけることならば、やってはいけない
と伝えるし

命の危険がある行動ならば、
それもやってはいけない
と伝えるし

反対にちょっと怪我するかもなとか喧嘩になるくらいのことならば、注意はしない。
大人が先回りして避けさせるよりも、身体の使い方とか自分の領域とか、痛みとか、子ども時代に怪我もケンカも混沌もあったほうがいいと考えているから。
など。

もちろん、これもあくまで自分の考えであって、その線引きや判断は一人一人違うだろうし、違っていい。
また、子どもの姿を見ながらじっくり考えて
「あれ?よく考えたら言わなくていいか。」
と自分の価値観をあらため、素直に子どもに学ぶのも素敵だ。

だけど、その上で、自分が大切だと考えていることを、子どもにちゃんと伝えるということは、大切な教育の一つだと、あらためて考えるようになった。

それをこちらがいくら伝えたところで、本人がどうするかはまた別の話だし。
こちらの価値観に沿わないからといって、そこで大人の力を使って制限するのは、それは教育ではないとも思う。
だけど、やっぱり伝え続ける。

そうやって大切にしたいこと、大切にしてもらいたいことを、ちゃんと伝えるからこそ、
子どもたちは大人たちから、さらにはもっと先人たちから引き継いでいく価値観や倫理観、道徳があるのだろうと思う。
そして、もう一方では、大人がなんと言おうと、そんなの余裕で越えて・あるいは異なって、新たに魅力的な価値観や概念を創り出すことも子どもたちはやるのだと思う。

これは、どっちが良い悪いではなく、どちらもあるのが自然なことなのだと思う。 
そう考えた時に、
「子ども主体」という風潮のもと、なんでもかんでも、子どものやることを大人が手放しで賛同するなら。それは、子ども主体ではなく、大人の役目と責任の放棄ではないかと思う。
大人の役目は待つこと、寄り添うことだけじゃない。
自分の、または自分たちの大切にしたい価値観や道を示すことも、役目だ。そこにのるかそるかは別として。

もう一つ最後に。
大人が子どもにメッセージを発したり、時には注意をすることは大事な教育の形だと思っているけれど、それが自分の考えではなく「周りもそうだから」とか「そんなことしたら、親として、担任として自分が恥ずかしいから」などという理由でされているなら、表向きは「注意」であっても、それは教育ではないのだろう。

結局、「一人一人がしっかり考える」ということに尽きる。
何事も。
しっかり考えていきたい。

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